みなさん、オリンピックの水泳のルールでは原則、『潜水泳法(体の全てを水中につけて泳ぐこと)』が禁止されていることはご存知ですか?
すべての水泳の競技で、原則潜水して泳ぐことはルール違反とされているのです。
しかし、それはなぜなのか?そう思われた方もいるかもしれません。
今回はそんな『潜水泳法』のルールにまつわるエピソードをご紹介します。
『潜水泳法』はルール違反ではなかった
実は、1956年のメルボルン五輪までは『潜水泳法』は禁止ではありませんでした。極端な話、息が続くのであればスタートからゴールまで水中に潜ったまま泳いでもかまわないルールだったのです。
このルールが生まれたのは、メルボルン五輪の男子200メートル平泳ぎで日本選手の古川勝選手が潜水泳法を駆使して金メダルを獲得したことが理由なのではないかと言われています。
圧倒的な潜水泳法の強さ
古川勝選手は、その驚異的な肺活量で、なんと約45メートルもの間潜水することができました。
そのため、平泳ぎのレース中にほとんど水に潜った状態で泳いでいたのです。潜水中は、表面上で泳いでいる時よりも上下動が圧倒的に少なく、その分スピードが飛躍的に上がります。その甲斐もあって、古川選手は世界記録を大幅に乗り換えて金メダルを獲得しました。
その後突然のルール改正。潜水泳法が禁止に
メルボルン五輪で古川選手が金メダルを獲得した後、国際水泳連盟(FINA)は直後になんと大胆にもルールを改正したのです。
潜水泳法は練習中に溺死事故を起こしやすいと言う理由で、スタート直後とゴールの前の手でのひとかき、足でのひと蹴りの時以外の潜水を禁止しました。
この露骨とも言えるルール改正は、当時の日本人に対する風当たりの強さを思わせるものとも言えますね。
現在も続く“不利”なルール改正
悲しいお話ですが…
現代でも日本人がメダルを獲得したその次から、突然ルール改正がされると言う事はあまり珍しいことでは無いのです。
スポーツ連盟の参加国が、アジア諸国よりも欧米諸国が多いことが原因ではないかといわれていますが、日本人がスポーツで世界一の座につくと、自分たちの有利になるようにルールを変更してしまう傾向が強く、ウィンタースポーツのスキージャンプなども以前は日本はメダル常連でしたが、不利なルール改正により、表彰台から遠ざかる結果となってしまいました。
平泳ぎの潜水泳法。そこには何の不正もありませんでした。
それはまぎれもなく、古川選手の努力や才能による能力での獲得であったはずです。
決して負けない日本選手の水泳魂
しかし、日本選手は、どんなにルールが改正されてもそれに合わせて再びたゆまぬトレーニングを続け、表彰台へと這い上がっていきます。
1972年ミュンヘンオリンピックにて、再び田口信教選手が独自のピッチ泳法を駆使し、金メダルに輝きました。泳法違反は無し、その上世界新記録での金メダルでした。
彼もまた、その4年前である1968年のメキシコオリンピックにて好記録を出し金メダルかと思われた所、ターン時のキックが違反であったと判定され失格となってしまった過去があります。
その雪辱を晴らした上での金メダルでした。
2015年現在でも、水泳のルールは常に欧米諸国優位になりがちな傾向があります。
例えば、日本人選手が失格とされがちなスタート時以外のドルフィンキック。欧米諸国の選手が取り入れだしてからはなぜか何度でも可能とされているのです。
世界平和を願ってのオリンピック。
各国の都合で、ルールが変わるという事は、あってはならないのではないでしょうか?
目まぐるしいルールの変更は、選手にも影響を及ぼします。
今後の水泳界が、よりフェアになっていくことを願わずにはいられませんね。