「スキー」と聞くと、多くの方は斜面を滑る様子を想像するでしょう。しかし、スキー競技には平地を進む「クロスカントリースキー」という競技があるのをご存知でしたか?
ただでさえ前に進みにくいスキー板を履いて、平らな道をグイグイと力強く滑走するさまは圧巻。クロスカントリースキーは冬季五輪の正式種目のなかで、もっとも過酷な競技と言われています。
この記事では、そんなクロスカントリースキーの種目や豆知識などをご紹介します。冬季オリンピックを満喫するためのお供にご覧ください!
クロスカントリースキーとは?
クロスカントリースキーとは、平地や丘などのアップダウンがあるコースを駆け抜ける競技です。
同じスキー競技の「アルペンスキー」は、斜面を滑り降りていく疾走感が特徴で、いかに速く滑り降りるのかを競います。一方のクロスカントリースキーは長距離を走り切るスタミナとスピードが重要であり、「雪上のマラソン」とも呼ばれています。
クロスカントリースキーの起源
クロスカントリースキーは紀元前2000年頃の北欧で誕生したといわれています。かつては雪山を移動する手段の一つとして利用されていましたが、用具の発達とともにスポーツとして発展していきました。
1776年には初のスキー大会がノルウェーで行われ、1924年に行われた冬季五輪の第一回大会からは正式種目として採用されています。
クロスカントリースキーの種目
クロスカントリースキーは、種目によって距離や走法が異なります。
クラシカル
クラシカル種目では、コース上に作られた2本の溝の中をすり足をしながら前に進む「クラシカル走法」を用います。
クラシカルはいわゆる「歩くスキー」で、左右のスキー板は平行にした状態を保たなければならず、「ハの字」にしてアイススケートのように滑ることは禁止されています。
冬季オリンピックでは、男子は15km、女子は10kmの距離をひたすら走り続ける種目です。
フリー
フリー種目は「クラシカル走法」とは異なり、走法に制限がない「フリー走法」を用います。
この種目ではアイススケートのように雪面を蹴りながら前に進む「スケーティング」が許されています。状況に応じたさまざまなテクニックが用いられ、クラシカル種目よりもスピードが感じられるのが特徴です。
しかしフリー走行が用いられる距離はクラシカル種目に比べて距離が長く、まさにマラソン。
冬季オリンピックでは、男子は50km、女子は30kmを走ります。
スキーアスロン
スキーアスロンはレースの前半と後半で走法や道具を変えて走る種目で、選手全員が一斉にスタートする「マススタート」方式で試合が始まります。
男子は30km(15km+15km)、女子は15km(7.5km+7.5km)の距離を走り抜けます。コース前半はクラシカル走法で進み、スタジアム内にあるスキー交換用のピットでスキーを履き替えたあとにフリー走法に切り替えて走ります。
スプリント・チームスプリント
スプリントはクロスカントリースキーの中でも走行距離が短く、短時間で勝敗が決まる種目です。
個人種目のスプリントでは、4名の選手が一斉にスタートして周回コースを走って着順を競います。チームスプリントは1チーム2名で構成され、交代を繰り返しながら周回コースを走って着順を競います。
冬季五輪では、個人スプリントはフリー走法、団体スプリントはクラシカル走法が用いられます。
リレー
3〜4人で構成されたチームでリレーを行い、最終走者の着順で勝敗が決定します。
出走順によって走法が決められており、第一走者と第二走者はクラシカル走法、第三走者と第四走者はフリー走法で行われます。男子は40km(10km×4人)、女子は20km(5km×4人)の距離を走ります。
クロスカントリースキーで使う道具
平地やアップダウンがあるコースを進んでいくクロスカントリースキーは、斜面を滑り降りるアルペンスキーと比べて使用する道具に特徴があります。
スキー板
クロスカントリースキーで使用するスキー板は幅が細く、アルペンスキーで使用するスキー板の半分程度の幅しかありません。
また、アルペンスキーではスキー板と靴をかかとまでしっかり固定しますが、クロスカントリースキーではつま先部分だけが固定されています。かかとが自由に動くことによって、平地や上り坂でも歩きやすくなっているのです。
ストック
クロスカントリースキーでスピーディーに前進するには、ストックで地面を押しながら進む力も大切です。そのため、クロスカントリースキーのストックは選手の肩の高さまである長いものを使用しています。このストックを巧みに操り、前進したり下り坂でバランスをとったりするのです。
前の選手に「どいて!」と叫ぶ?
クロスカントリースキーでは、前の選手を追い越すときに「バンフライ」と声をかけます。
バンフライ(Bahn Frei)はドイツ語で「どいて」という意味があり、声をかけられた選手はコース横にずれて道を譲らないといけないのです。
クロスカントリースキーの種目や基礎知識まとめ
クロスカントリースキーは、長距離のコースをひたすら走り続ける「雪上のマラソン」。難しいルールがなくシンプルな競技です。全身の筋肉を使って坂道さえもスキーで登っていく様子は、一般人には信じられない光景かもしれません(笑)フリー種目の競技は選手ごとの走法の違いにも着目して観戦してみてください。