テニス経験者または熱心なテニスファンなら、「あの選手はどこのラケットを使っているのだろう?」と気になったことはないだろうか。錦織選手がユニクロのウェアを着ているのは、試合時に目に飛び込んでくるロゴを見れば一目瞭然だ。しかしラケットは、となると?そして、ジョコビッチやフェデラー、マレーら対戦している上位ランカーたちはどうだろう?また女子のセリーナやクルム伊達選手は?今回は、テニス選手の相棒であるラケットに注目し、トッププレイヤー達が使用するラケットのメーカーと種類についてまとめてみた。
男子選手編
まずは男子選手から。
2016年1月時点のATPランキングトップ10に君臨する選手たちのラケットを調べてみた。
ノヴァク・ジョコビッチ
HEAD SPEED PRO
HEADの技術の推移を集めた、最新式のラケット。ウエイトが重く、さらにテンションのかかりかたなどの癖が強いため使用にはかなりの熟練した技術を要するが、使いこなすことができれば非常に強力なスピン、スピードをかけられる。
アンディ・マレー
HEAD RADICAL PRO
柔らかな打球感でボールのコントロールが的確な上、しっかりとしたパワーを併せ持つラケット。オールラウンドプレイヤーかつ積極的なプレイをするマレーにマッチしている。また、ソニー製のスマートテニスセンサーが使用でき、パソコン上でも打球の分析が行える次世代タイプのラケット。
ロジャー・フェデラー
ウィルソン PRO STAFF 97 RF
このラケットは、言うなればフェデラーによるフェデラーのためのフェデラーのラケットである。
ウィルソンとフェデラーの、よりよいテニスへの向上心と情熱が詰まったラケットである。オールラウンドプレイヤーであるフェデラーのパワー、テクニック、フィジカルのバランスの良さを最大限に活かすことの出来る、上級者向けかつ非常にバランスの良いラケットである。
スタン・ワウリンカ
ヨネックス VCORE TOUR G
バランスの良さに定評があり、かつ器用貧乏ではなくしっかりとしたパワーがあるのが特徴のラケット。それゆえにワウリンカの持つパワーを水のようにまっすぐに受け止めるのだ。
ラファエル・ナダル
BabolaT AeroProDrive GT(バボラ アエロプロドライブ GT)
グリップ部分にセンサーが搭載されており、直接ラケットをUSBでパソコンに接続し、自分の打ったショットの記録や負荷などデータを参照することができるハイテクラケット。彼の優勝の影にはテクノロジーがあったのではと一時期話題にもなった。
ダビド・フェレール
Prince tour100
身長175cmと元テニスプレイヤー界では小柄な方の選手であるフェレールの武器は、強烈なトップスピン、高い持久力、ミスの少ない正確なショットである。パワータイプのラケットが主流の中、彼のラケットは、スピン重視のテクニカルタイプ。軽い打球感と、ガットの強いしなりが特徴だ。
錦織圭
ウィルソン BURN95J
錦織圭選手は、幼少期からこのラケットを使用し、世界へと旅立った。驚くほど軽く、かつスピードが出るのが特徴的なモデルである。エアケイ、と呼ばれる彼らしいラケットであると言える。
トマーシュ・ベルディハ
HEAD グラフィン XT インスティンクト ミッドプラス
身長190cmの長身が特徴的な選手であるベルディハは、その大柄な体とはうってかわって非常に軽いラケットを使用している。フレーム、ガット共によくしなる構造が特徴的で、特にサーブの際などはその特徴を活かした強烈な打球を産むことができる。
ジョーウィルフリード・ツォンガ
BABOLAT アエロプロドライブ プラス
強烈なパワーが持ち味のツォンガ。その肉体が打球のパワーの原動力とするならば、ラケットは多岐にわたる芸術的なスピンの原動力といえるだろう。パワーもスピンも強烈、そして力強いツォンガの力を十二分に出す、選手の持ち味を最大限引き出すラケットだ。
リシャール・ガスケ
HEAD グラフィンXT エクストリーム
テクニカルなショットと美しいバックハンドが特に有名なプレイヤー、ガスケ。重さがしっかりとあり、パワー性もありながら、コントロールとスピン性能を兼ね備えたこのラケットは、まさに彼向きだ。
女子選手編
続いて女子選手について。
セリーナ・ウィリアムズ 選手
ウィルソン BLADE
超強力な時速200キロ越えのサーブを繰り出すセリーナ・ウィリアムズ。スイートスポットが上半分に広く、サーブを打つ際にパワーが非常にかかり、重く速い打球を繰り出すことができる。また、その性能の割に軽く振り抜きやすいのも特徴だ。
マリア・シャラポワ
HEAD・グラフィンXT・インスティクトミッドプラス
男子選手編でも、トーマシュ・ベルディハが使用しているが、なんと彼女もこのラケットである。清涼感のあるデザインがなんといっても目を引くラケット。このラケットの特徴はまず驚くほどの軽さである。軽さを武器としたよくしなる性質を利用した、非常にラリー向けのラケットでもある。
ビクトリア・アザレンカ
ウィルソン・JUICE100
安定したバックハンドが持ち味のアザレンカ。このラケットは非常にパワータイプで、100の力で打ったボールを110〜120の力に伸ばすというキャッチフレーズが特徴だ。打球時の振動が少なく、心地よい打球感とスピード感を感じることができるラケット。
クルム伊達公子
ヨネックスS-FiT Radia(S-フィット ラディア)
ダブルスでも活躍が目覚ましいクルム伊達公子。主に前衛を担当する彼女の愛用するラケットらしく、主にネットプレー等の際に特に真価を発揮するラケットである。力強いボレーや、回転の鋭いスライスなどテクニカルなボールを打ちやすく、また、女性テニスプレイヤーの癖などを考慮した構造である。
土居美咲 選手
スリクソン レヴォCX2.0
独特のリズム感のある回転、変化に富んだプレイスタイルに定評があるサウスポーの選手、土井美咲の使用ラケットはスピード感のある打球を繰り出せるのが大きな特徴。ボールをつかみ、しっかりと振り抜くことができる吸い付くような打球感が特徴だ。ラリーの応酬が続く際に、相手に独特のプレッシャーをかけることが出来る。
大坂なおみ 選手
YONEX EZONE DR 98
180cmという、女子の中でもとっぷくら長身から繰り出されるパワーとスピードのあるサーブが持ち味の日米ハーフの大坂なおみ。彼女のサーブも時速200キロに達する。そんな彼女の使用ラケットは、もちろんパワータイプだ。相手のパワーを受け止め、さらに増幅し打ち返すカウンタータイプでありながら、サーブの際も最大限にその打球のパワーとスピードを高めてくれる。
試合に使用するラケットは1本ではないが…
まず、一試合に使われるラケットは一本ではない。大抵の場合は、試合のシーンやコンディションに合わせて、数本のラケットを使いわけて試合をする。フレームが同じ場合でも、ガット(糸)の張り方(テンション)が違うのだ。それによって微妙なスピンや、打球の感覚を生み出している。
しかし、多くの場合フレームは同じものを使用する場合が多い。トッププロともなると、メーカーのバックサポートが受けられる場合が多く、その場合は基本的に同じ会社のものを使うのだ。彼らは、トッププロの選手であると同時に、メーカーの顔でもあるというわけである。
しかしやはりメーカーにも個性があり、選手にも選択の自由がある。多くの選手達は、トッププロになる以前から同じメーカーのものを使っている事が多いことからもそれがうかがえる。彼らが選ぶラケットは、やはり彼らの選択であるのだ.
トップ選手に憧れてテニスをこれから始めようとお考えで、もし”カタチから入る”なら、この記事を思い出して参考にしてみて欲しい。そして、あなただけの相棒が見つかれば幸いだ。