体操は、文字どおり「体を操る」競技です。しなやかに鍛え上げられた肉体と研ぎ澄まされたバランス感覚、そして指先からつま先まで全神経を集中させ、観る人の心を震わせる見事な技を演じます。
では「新体操」はどうか?新体操の新とは、一体何が新しいのでしょうか?皆さんは「新体操」と聞いて、どのようなイメージが浮かびますか?
この記事では、改めて新体操について掘り下げて、種目や豆知識をご紹介したいと思います。「新体操ってなんとなく興味はあるけれど、実際どんなスポーツなの?」と気になった方はご覧ください!
新体操とはどのような競技?
新体操は、リボンやフープなどの手具と呼ばれる道具を使用しながら演技を行う体操競技です。ヨーロッパでは「芸術体操」と呼ばれ、言葉のとおり非常に芸術性が高く、音楽に合わせて軽快な演技を行い点数を競います。
演技の難易度を示す加点方式のDスコアと、技の出来栄えを示す10点満点から減点していくEスコアの合計点で決まります。
手具を巧みに操るテクニックと、しなやかでやわらかい動きをするための柔軟性が勝利の鍵を握る競技です。
新体操のはじまり
新体操は1930年代にソ連で誕生しました。1963年に世界選手権大会がハンガリーで開催されたことで、競技としての新体操が世界中に広まります。1984年のロサンゼルス五輪では個人総合競技が正式種目となり、1996年のアトランタ五輪では団体総合競技も正式種目になりました。
ちなみに、「”新”体操」と呼ばれる理由は、まず従来の器械体操よりもあとに誕生したということと、1963年の世界大会で使われた「modern gymnastics(直訳:近代体操)」という名称を翻訳したためだそうです。日本では、1968年に開催された「全日本新体操学生選手権」から新体操という名前が使われるようになったようです。
その後、英名のmodern gymnasticsの方はmodern rhythmic gymnasticsとなり、現在のRhythmic gymnasticsに変わりました。これを直訳したら「リズム体操」になりますが、日本では新体操がそのまま根付いて使用されています。
新体操には5つの種目がある
新体操には5つの種目があり、それぞれの種目で別の手具を使用します。
跳んだり投げたり自在に操る「ロープ」
ロープ種目では縄跳びのようにロープを回して跳んだり、空中に投げてキャッチするなどの多彩な技が魅力的です。身体に巻き付けたロープが、まるで生きているかのように移動していく様子も見どころです。
軽やかなステップや力強いジャンプが要求される種目ですが、ロープが床についてしまったりピンと張らずに弛んでしまったりすると魅力が半減。ロープの持ち方や投げ方など、ひとつひとつの動作にテクニックが必要な競技なのです。
身体全部でくるくる回す「フープ」
フープ種目で使用するのは、みなさんが子どもの頃に見たことがあるフラフープです。腰や首元、足首など、身体中のいたるところでくるくると回します。
一番の見どころは、高く投げたフープを身体を通して受け止める技。投げるタイミングや受け止めるタイミング、落下点を予想して的確にキャッチするダイナミックな技が繰り出されます。フープに身体を通す柔軟性と精巧なテクニックが必要な競技です。
吸い付くように身体を転がる「ボール」
ボール種目では、女性が手のひらで持てる大きさのボールを使用して演技を行います。ボールを掴むことなく、やさしく手の上に乗せたりバウンドさせたりして操ります。
ボールが肩や背中を転がる様子は、まるでボールが身体に吸い付いているよう。テクニックだけでなく身体の柔軟性も重要な競技なのです。
2本の手具を手足のように操る「クラブ」
クラブ種目では、長さが40〜50cmあるマラカスのような手具を使用します。2本1組で使用するため、右手で回しながら左手で空中に投げるなど、左右で異なる演技をしなければなりません。
2本のクラブを同時に投げてキャッチする、または次々と投げてキャッチしていく技は、落下のリスクが大幅に高まります。テクニックと集中力、クラブのコントロール力が重要な種目です。
新体操の代表競技「リボン」
新体操と聞いて、真っ先に思い浮かぶであろう種目がリボンです。リボンの長さは6mもあり、流れるような動きを保つために常に手首を動かし続けます。リボンの動きに合わせて、身体を美しくしなやかに動かすテクニックも必要です。
リボンが床についたり途中で絡まってしまうと減点されてしまいます。大きな結び目ができてしまうと、減点されるだけでなくリボンのコントロールも難しくなり、点数をもらうことができないのです。そのため、選手たちは演技中にリボンの結び目を素早くほどく練習も行います。
個人戦と団体戦におけるルールの違い
新体操には個人戦と団体戦があり、演技時間や手具などのルールが異なります。
個人戦
個人戦では1人で4種目の演技を行います。そのため、すべての種目において高クオリティの演技が求められるのです。東京五輪では、ロープ種目を除いた4種目で競技に挑みます。演技時間は1分15秒〜1分30秒の間で、長すぎても短すぎても減点対象となります。
団体戦
団体戦では5人がマットに上がって2種目を演じます。この種目は定期的に手具が入れ替わるため、選手たちはどの手具も扱えるようにしなければなりません。東京五輪では、「ボール」と「フープ・クラブ」が種目として定められおり、手具の交換回数も決められています。
ボール種目は5人の選手が全員でボールを持ち、一体感のある演技が必要となります。「フープ・クラブ」では、フープが3本とクラブ2セットを使用します。2種類の手具を同時に扱うことで演技の幅が広がり、よりダイナミックな演技が期待できるでしょう。演技時間は2分15秒〜2分30秒の間で、個人戦と同じく長すぎても短すぎても減点対象となります。
衣装や表情も重要な採点基準
選手たちが身につける衣装は、ラメやスパンコールできらびやかな装飾が施されています。音楽や演技をより引き立てるようなデザインは、観戦者をより楽しませてくれるでしょう。新体操のシューズは、つま先だけが覆われている「ハーフシューズ」を採用しています。当初はつま先を美しく見せるために採用されていたようですが、次第につま先の保護を兼ねるようになりました。
また、演技においては選手の表情も重要な採点基準となります。どんなに素晴らしい演技をしても、口角が下がっていては魅力が半減してしまいます。高難度の技をしっかり決めながら、笑顔を絶やさず演技をする選手にも注目です。
新体操を楽しもう
新体操は、手具を巧みに操るテクニックと選手の柔軟性が見どころです。高く空中に投げた手具を手足を使ってキャッチし、流れるように演技をこなす姿はとても美しく、まるでバレリーナのよう。
スポーツでありながら芸術面を兼ね備えた新体操は、スポーツにそれほど興味がなかった方でも観て楽しめる競技といえますので、東京オリンピックではぜひ観戦してみてくださいね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!