子供のころ、公園やレジャー施設にあるトランポリンで遊んだことはありますか?最近では体幹トレーニングやダイエットに効果があると話題になり、全国各地にトランポリン施設がオープンしています。
実は、トランポリンは五輪種目として正式採用されていることをご存知でしょうか?「え、競技なの?」と思われた方もいらっしゃるのでは?
この記事は、そんな皆様の予習ページです。トランポリンの起源やオリンピックにおける競技ルールなどについてご紹介します!
トランポリン競技とは
トランポリン競技は、高く跳躍して技を繰り出し、獲得点数で競い合う競技です。競技で使用されるトランポリンは、縦4m×横2mのフレームに、幅4mmのナイロンテープを編み込んで作られています。
跳躍の高さは女子選手で6m、男子選手は8mで、ビルの3〜4階ほどの高さまで跳躍するのです。
華麗に飛び跳ねる見た目とは裏腹に、とても体力を消耗する競技です。30秒の試合時間で100m全力疾走と同程度の体力を消耗し、トランポリンに着床したときにかかる重力は、体重の13倍にもなるとか。体重50kgの選手でたとえると、その重さは650kg。軽自動車1台分の重さがかかることに(驚)
トランポリンの起源と創始者
トランポリンという名前は、中世ヨーロッパで活躍していたサーカス団員が由来だといわれています。もともとはサーカスで使われるなど遊びの一部として生まれ、第二次世界大戦中のアメリカにおいては、パイロット養成のための訓練道具として使用されていました。
スポーツとして広まったのは第二次世界大戦後、アメリカ人の体操選手ジョージ・ニッセンによってスポーツ化して世界中に広がりました。
そもそものきっかけは、1930年、ニッセン氏が16歳のときに地元アイオワ州のシーダー・ラピッズでサーカスを観に行ったこと。演者が高いところからジャンプして網に着地してジャンプする様から「人が飛び跳ね続けられる装置が作れないだろうか」というアイディアが沸いたのだとか。
その後失敗を繰り返しながら開発を続けて、1945年に「タンブリング装置」という名称の現在のトランポリンの原型のような器械の特許を取得。あわせて、スペイン語で「飛び込み台」という意味のel trampolínからTrampolineという名前の商標も取りました。
(https://www.smithsonianmag.com/innovation/how-trampoline-came-be-180974343/)
日本で広まったのもニッセン氏の働きによるものです。そして、2000年のシドニー五輪からは正式種目として採用されています。
採点項目は4つ
トランポリン競技では採点項目が4つあり、「完成度」「技のの難易度」「高さ」「移動の少なさ」の合計点で勝敗を決めます。
競技中は10種類の異なる技を披露しなければならず、技の完成度や難易度を競います。一度の失敗で強制的に演技が終了してしまう、非常にシビアな競技なのです。
①技の出来栄えや安定感を採点する「演技点」
演技点では、技の出来栄えと安定感を採点します。6名の審判員によって跳躍時の姿勢や身のこなし、安定した跳躍ができているかどうかを判断します。つま先までピンと伸ばした美しい姿勢は、選手たちの日々の努力から生まれているのです。
②技の難しさを採点する「難度点」
難度点では、技の難しさを採点します。回転数やひねり、技を繰り出すときの姿勢が崩れていないかを判断します。点数は0.1点単位で加算されていき、回転数やひねりの難易度によって加算点数の幅が広がります。1/4回転すると0.1点、一回転は0.1点加算されるので合計0.5点、半ひねりで0.1点加算など、非常に細かく採点されます。
③空中にいる時間を採点する「跳躍時間点」
トランポリン競技では、空中にいる時間が長ければ長いほど点数が加算されます。これを跳躍時間点といい、選手たちは点数を稼ぐために高く跳び続けなければなりません。跳躍時間点は審判員たちの目視判断ではなく、トランポリンの下に設置されている「跳躍時間測定器」という機械をもとに算出されます。
跳躍時間測定器の仕組みはとてもシンプルで、トランポリンが沈むと赤外線センサーが切れて計測が止まるようになっています。「選手たちが空中にいる=赤外線センサーが稼働している」時間を計測して、1秒につき1点加算されます。
④着地点のズレを減点していく「移動点」
高く跳び続けるためには、いかに中央に着地できるかが大きなポイントです。10点満点の持ち点から、着地点が中央から離れるほど減点されていきます。減点されない中央部分の範囲は1m×1m、空中で少しでも体制が崩れると着地点が大幅にずれてしまいます。高く跳びながら中央部分を狙って着地するのは、練習を積んだ選手でも難しいといえます。
ペナルティによって減点されることも
高得点を出しても、ペナルティ判断で減点されることがあります。同じ技を2本以上跳んだり、トランポリンの周りを囲うマットに少し触れたりするだけでも減点対象になってしまいます。
服装に関する規定も厳しく設定されていて、ひらひらとしたものや怪我につながるような装飾がある服装は認められていません。
技の難易度
基本空中姿勢は3つ
基本の空中姿勢は、頭からつま先まで一直線に伸ばす「伸身(ノビ)」とひざを抱えて身体を丸める「抱え(タック)」、身体を腰の部分で2つに折ってひざを伸ばす「屈伸(パイク)」の3種類。身体を丸める「タック」は加点がなく、「ノビ」と「パイク」は0.1点の加点がつきます。
3回転以上は難易度が上がる
回転やひねりを加えながらトランポリンの中央を狙って跳躍するのは難易度が高く、技の種類も3回転からはぐっと少なくなります。難易度の低い技を確実にこなしていくのか、高難度の技に挑戦して高得点を狙うのか、選手一人ひとりの戦略にも注目です。
トランポリン動画
こちらは2015年の世界大会の男子決勝の様子です。
トランポリン競技は裸足厳禁!
高く飛び跳ねる選手たちにとって、つま先の感覚や足の柔軟な動きはとても大切です。しかし、トランポリン競技では裸足での演技は認められておらず、専用のシューズか靴下を着用しなければいけません。これは、トランポリンのベッドが一枚布ではなくテープを編み込んだメッシュ状のものであることから、足の指や爪が引っかかってケガをするのを防ぐ目的があります。
トランポリン競技のルールや豆知識まとめ
トランポリン競技は、跳躍の高さと技の美しさが特徴の演技種目です。空中で美しく回転する姿は、まるで空を自由に飛んでいるようで思わず息をのむことでしょう。オリンピックでは選手たちの華麗な演技をぜひご堪能ください!